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雪月野原日記

2008.06.04設置 おバカ家族の脱力な日常

怖かった夢

ちょっと昼寝したすきに、夢を見ました。
あまりにも鮮明で、妙に長い感じがして、リアルで、怖くて、はっとして目が覚めた時、汗びっしょりで息を弾ませたくらい。
何というか、永遠に続きそうな恐怖。
その怖かった夢を、ちょっと小説風味に書いてみました。
興味ある方は、続きからどうぞ。
あ、私の夢の話なので、実際にある場所でもないし、実際にあったことでもありませんのあしからず。
そして、その夢の中の偏見具合を責められても困りますが、あくまで夢の中設定ということでお願いします。
注意:めちゃ長いです。日記レベルではないので、読まれる方はお暇なときにどうぞ。




その県営団地は随分と昔からあったように思う。
古ぼけた外観は、一向に外壁を直されたりすることもなく、家賃も安いことから、今では生活保護世帯、低所得者世帯、外国籍の者たちが多く入居し、その周辺の治安はすこぶる悪いという噂でもあった。
実際は以前からの入居者も多く、子世帯が離れて高齢者世帯となってしまったなど、事情は様々だ。
ただ、畑を宅地し、新しく周辺に住宅街が建ち並び、他所から来た世帯が増えると、その場所はなるべく近寄ってはいけないと小学生に諭される場所になりつつあった。
まだ十年そこそこしかそこに住んでいない一家の母親も同じように小学生の子どもたちに言い聞かせることになった。
それというのも、スーパーの帰りに近道代わりにその団地の横を通った時だった。
明らかにまだ学校がある時間、中学生と思しき子はうろつき、通りがかったその母親を睨むようにして座り込んだ。
その上の窓からは、昼間とはいえ、かなりの大音量で軽快な音楽がかかっており、聞こえてくる言語は明らかに日本語ではなかった。
パーティでもしているのか、陽気な笑い声はこの団地でさえなければ楽しそうと思えるくらいの状況だ。
隅に止められている違法であろうバイク。ナンバープレートは直角に曲げられていて、そのままでも整備不良で止められそうだ。
周辺の住宅街があまりにも静かなので、異質に感じる。
そそくさと立ち去り、それでもこれは偏見すぎるだろうかと後ろを少し振り返って向き直った時だった。
団地の入口が見えるその通りは、何の変哲もない。
それなのに、その奥に見える団地の入口がやけに暗く見えた。
明るいところを見ていた目の錯覚だとそのまま通り過ぎる。
それでも、もう一度だけ入口を見た。
誰かがいた。
ほっとしたが、次の瞬間驚いてもう一度見た。
小学生に見えたのだ。
先ほども中学生に感じた違和感だ。
この時間は普通ならば学校にいる時間だ。
何らかの理由で休んでいるのではない限り。
とっさに母親はさぼっているのかと感じた。それこそ偏見だろうと言われるかもしれないが、病気で休むというよりは、ただ立っているように感じられたのだから無理もない。
スカートをはいた女の子のように感じた。
それもいまどきは珍しい吊りスカート。
そんな服装はどちらかというと今風ではなく、母親が小学生の頃に着せられていたような感じだ。強いて言えば、ちびまるこちゃんのスカートを想像してもらえればいい。
実際母親もそう思ったのだ。
家に帰り着いた母親が思ったのは、やはり理由もなく団地に行くのは控えた方がいいのだろうということだ。
当然団地にも小学生はいるだろうし、息子の同級生もいるだろう。友だちならば行くこともあるかもしれないが、親しくしている子の中にはいなかった気もする、と。
そもそも団地に入居している人数自体少なくなってきていて、近く建て直されるという噂だ。
どこまで本当かわからないが、団地の半分以上は空き家状態なのはそういうことなのだろう。
どれだけ家賃が安いのかは知らないが、市内には他に新しく建てられた団地もないわけではない。その団地に固執する理由にはならないだろう。

その翌日のことだった。
小学生の息子が「今日ね、新しい子が来たよ」と報告してきた。
「へえ、どこから来たの」
「なんかねぇ、北の方からだって」
そういう何ともアバウトな報告では、首を傾げるしかないが、女の子だということで、それほど親しく付き合うことはないだろうとあまり聞かなかった。
そしてさらに翌日、「その子ね、団地に住んでるんだって」と続報を聞けば、なんとなく思い当たる節があった。
まさかと思いつつ「その子って、髪の長い子?」と聞けば「そうそう。これくらいの」と肩の下あたり、背中の真ん中あたりを示す。
団地の入口にいた子かもしれないと思ったが、それは言わなかった。
「おじいちゃんと住んでるんだって」
「ああ、なるほど」
そう答えたが、息子には何がなるほどなのかはわからなかっただろう。
高齢の祖父を頼って、もしくは介護のために引っ越してきたのかもしれないととっさに思ったからだ。
「今度みんなで遊びに行くんだ」
その言葉にぎょっとした。
「…行くの?」
「うん、皆でだよ」
「ああ、皆でね」
「だって、団地ってどんなところか知らないし。それに、いっつも一人で行っちゃいけませんって言われてるから、気になるじゃん」
「ああ、そうかもね」
皆で行くならまあいいかと胸をなでおろしたが、次の言葉に更に驚いた。
「だから、皆で探険するんだよ」
「た、探険か~。でも人さまの家だから、探険っていうのも失礼じゃない」
「でもね、お化け出るって」
「お化け?」
「昼間だから出ないでしょ」
「お化けって夜だけじゃない気がするけど」
「それは幽霊でしょ」
何が違うんだと心の中では突っ込みつつ、子どもの言葉に再び首を傾げる。
治安の悪い話なら山ほど聞いたが、お化けの類は正直聞いたことがなかった。
昨今は団地を舞台にしたホラー映画もあったが、いくらなんでも身近にそういうスポットがあるなどと思わない。というか見たことも経験したこともないのだから、仕方がないと言えるだろう。
「それで、お化けってどこに出るの」
「団地じゃん」
「団地のどこ」
「真ん中の広場」
「広場なんてあったっけ」
「あるんだって」
あれだけの団地だから、広場があってもおかしくはない。少しくらいの遊具もあるかもしれない。見たことはないが、と母親は想像した。
「でも昼間出ないんじゃ、行ってもいないでしょ、お化け」
「そうなんだけどさー」
「それに、本当に出たらどうするの」
「えー、ダッシュで逃げる」
「…ヘタレじゃん」
「だって怖いもん」
「皆も置いて?」
「絶対皆逃げるって」
「もしも残された子がどうかなったらどうする?」
「えー、じゃあやっぱやめようかな」
そう言いながらまだあきらめきれないのか、でもなぁと言いながら遊びに行ってしまった。

そんな会話をした数日後、「行ってきます」と子どもが出かけた先は、団地。
一緒に自転車で出かけたのは同じクラスの男の子だった。
団地の手前で待ち合わせをして、皆で団地に住むこの会いに行くらしい。
よくある光景、だと思っていた。
夕方、自分の息子だけ帰ってこないことをのぞけば。

「あれ、帰りは一緒じゃなかったの?」
なかなか帰ってこない息子を心配して、家の近所で遊ぶ同じクラスの男の子に問いかけた。
「途中までは一緒だったよ」
「途中まで?」
「忘れ物したから取りに行くって」
「何を忘れたって?」
「えーとねぇ、ぼうし」
「帽子かぁ」
そうは言いつつ、夏の日は長くてもそろそろ六時を過ぎる。
公園で遊ぶ子どもたちは、日が長いせいかまだ遊ぶ気だ。
「まだ明るいけど、そろそろ帰りなよ」
そう声をかけて、自分は団地へと向かうことにした。
何か胸騒ぎがするときは、行動するのが一番だ。

程なく団地に着くと、入口に息子の自転車があった。まだ団地内にいるらしい。
その例の団地の広場とやらに行くために、団地の入口から奥へと進む。
太陽がさえぎられて、団地の奥に行くほど日は陰る。影が濃くなるようで少しだけ足がすくむ。
灯はあるのだが、切れているのか点いてもいない。
辺りを見渡して、息子がいないか確かめるが、姿はない。
どこかの部屋に入り込んでいたとしたら見つける術はない。出てくるのを待つだけだ。
後ろに気配を感じて振り向いた。
棟の陰、ちょうど母親が入ってきた団地の入口付近にあの女の子がいた。
同級生かどうかはわからなかったが、尋ねてみることにした。
「ちょっと聞いてもいいかな」
そう声をかけただけで、女の子の姿は棟の向こうへと姿を消す。恥ずかしいのか、不審者扱いをされたのか。
「あ、ねぇ、待って」
後を追いかけるようにして団地の入口へと戻る。
しかし、女の子の姿はすぐそばの棟の中へと足早に消えていく。
思わず棟の中に足を踏み入れた。
今捕まえなければ息子の行方がわからなくなるとでもいうように。

足を踏み入れると、そこは当たり前の団地の廊下だった。
上を見上げれば階段がずっと続き、何階建てだったか考える。
女の子の姿は既にない。
上に行ってしまったのか、どこかの部屋に入ったのか。
諦めて戻ろうかとしたとき、聞き慣れた足音がした。
足音だけでこれと言えるかどうかは疑わしいかもしれないが、強いて言えば母親としての勘とでも言うのか。
息子の名前を呼んで声をかけたが、返事はない。
階段を上る足音だ。
どこまで上るつもりなのか知らないが、何をしているのだろうと眉をひそめる。
帰ったら説教だと思いながら自分も階段を上り始めた。
一階分上っては廊下を確認する。
ずっと奥まで真っ直ぐな廊下は、半分外が見える。雨でも降ったら間違いなくぬれるだろう。
玄関ドアが等間隔で並び、どれも閉じられている。
階段のところからは一番奥までは見難い。既に日が落ちかけの今、奥の方は陰になっているからだ。当然こちら側が北側で、日当たりの良い部屋側が南になるように建てられている。
母親が上り始めた棟の北側に同じような棟が建ち並んで行く構図で、棟と棟の間に広場があるのが見えた。
仕方なくもう一階分上ることにした。
息子だと思った足音も止まっている。
上っている足音は、自分の分しかない。
体力に自信のない母親は、すでに不安を感じ始めていた。
このまま五階分も上らされたら、足はがくがくだろうと。
三階分上ったところで、目的の足音の主を見つけた。
「お母さん」
泣きそうな顔で息子が立っていた。
「こら、いつまで遊んでるの。さっさと帰ってこないとだめでしょ」
「帰ろうとしたんだ」
「心配したんだから」
「だって、帰りたくても帰れなかったんだもん」
「何で」
「帰り道、わからない」
「は?」
「下に下りられなくって」
何を言ってるの、この子。
そう思った。
「まあいいや。帰ろう」
そう言って手をつないだ。
いつまで手をつないでくれるかわからないが、まだ手を伸ばせば手をつないでくれる。
手をつないで振り返ると、そこに階段はなかった。
「あれ?」
下り階段はないが、上りの階段はある。
そんなバカな。今上ってきたところだと思いながらも、途切れて廊下があるだけの三階だった。
首を傾げながら、仕方なしに廊下を進むことにした。こちらになければあちらにあるかもしれない。この階の住人が下りるのに使う階段やエレベータがどこかにはあるはずなのだから。
廊下を進んでも、一向に階段は見当たらない。
同じような玄関ドアの前を通り過ぎるたびに不安になる。
団地の棟は、こんなに大きかっただろうかと。
歩いても歩いても端にたどり着かない気がして、少しだけ手が汗ばんでくる。
今ここで息子の前で焦ってみせるのは良くない。
息子も緊張しているのか、二人で握りあった手が汗ばんでいるのがわかる。
固く握りしめて、足を止めた。
「…おかしいね」
とうとう声に出した。
「うん、おかしいんだよ」
「…どういうこと」
「帰りたくて歩いたの。でも、下りる階段が見つからなかった」
そういうことかと先ほどの言葉の意味を知った。
「戻る?」
「うん」
もと来た方に戻りながら、必死で考える。
上り階段の途中で振り返ったら、上ってきた階段は少なくとも見えるはずだ。
そこは上り階段でもあるが下り階段でもあるはずで、そこでさっさと踵を返して下り始めたら、今度は下り階段になるのじゃないかとか。
上るよりは下りる方がいいような気がする、と。
「階段、下り始めたら、上りきる前に途中で引き返すよ」
「それなら途中で消えないよね」
「わからないけど」
心の中で繰り返す。
本当にそれでいいのか、わからないけど。
「ねえ、そう言えば、新しく来た女の子の家、どこだったの」
「えーとね、三階くらいだった」
「くらいって何、くらいって」
「だってさ、同じようなドアばっかじゃん。ぐるぐる上っていくうちにわからなくなっちゃったんだよ」
無理もない。
住宅街には同じ会社が建てた同じような家がある一画もあるが、一戸建ての家にはそれぞれ個性があり、植えてある木や花、庭に置いてある車など微妙に違う。
それでも団地ですらドアの前に時々三輪車が置かれていたり(たとえそれが規律違反だとしても)、新聞受けの古さ加減など、少しは違うところがあってもいいはずだった。
それなのに、この団地のこの階の殺風景さはどうだろう。
そう言えば住人が減っているという話だったか。
廊下から見えるのは、同じような棟と少しの空。
窓側から見えれば景色はきっと違ったものになるのだろうが、玄関ドアが並ぶこちら側では仕方がないかもしれない。
「疲れた」
「だったら皆と早く帰ってこればよかったでしょ」
「だって、ぼうし忘れちゃったから」
ああ、そう言えばそんなことを言っていたなと思いだした。
「忘れたら、取りに行ってこいって怒るじゃん」
「まあね」
母親はいつもの自分の言動を思い出し、少しばつが悪くなって首をすくめた。
二人で手をつなぎながら歩き、少なくとも息子を見つけられたことだけは良かった。
もしもこの団地から出られないとしても、息子とは一緒だと思った。
もちろんどうにかしてこの団地から出なければと思っていたが、本当に出られなかったらここはいったいどんな空間なのだろうと考えた。
少しだけほっとしたのは、ようやく階段にたどり着いたからだ。
しかし、先ほどと同じなのか、下り階段はない。
上り階段だけが続いており、その上にわずかばかりの空が見えるだけだ。
もうすでに身体は疲れてきていたが、ずっとここにいるわけにもいかないので、先ほど考えたことを確かめてみることにした。
上りかけの階段の途中で振り返ってみる。
階段の踊り場は見えた。
しかし、そのままその階段を下りてみると、階段の踊り場より先の階段はなかった。
「…ないね」
二人してがっかりと声を上げた。
もう一度上って下りても同じだ。永遠にそこから下には行けない。
もう一度上りかけて振り向くと、そこに人影を見てぎょっとして足を踏み外しそうになった。
これは幸運なのか。
勢い込んでその人影に話しかけた。
「あの、下に下りたいんですが」
何をを言っているのかと思われても構わない気持ちで話しかけたその人物は、あの小学生の女の子だった。
あ、○○ちゃんと息子が話しかけるのを密かに期待したのに、息子は黙ったままだ。
「知り合いの子じゃないの?」
母親がこっそり聞いてみた。もちろん声はその子に筒抜けかもしれないが。
「知らない」
あっさりと息子が答え、母親は落胆した。
しかもその女の子からも返答はない。
「一緒に下に下りてくれないかな」
親しみを込めてそう聞いてみた。
女の子は何も言わず、動かず、その場に立っている。
その脇をすり抜けて下に下りれば、もしかしたら今度こそ下り階段に行き会うかもしれないと期待した。
二人して下りようと足を動かしたが、息子はちっとも動かなかった。
「どうしたの」
息子も何も言わない。
ただ、頑として動かないので、下りようもない。
「今ここで下りないと、ずっと二人だけかもしれないよ」
そう言えば、強張った顔で「その方がいい」とつぶやいた。
「何で?」
その返事が聞こえないうちに、女の子が動いた。
踊り場からゆっくりとこちらに向かって上ってくる。
普通に避けようと思っていた。
ところが、息子は恐怖に駆られた顔をして、階段を上り始めた。
「あ、ちょっと、何で上るの」
つられて階段を上る。何せまだ手は握られたままだったからだ。
「ちょっと待って」
足がもつれそうになる。それでも手を放す気はなかった。今ここで手を放したらまた会えなくなるかもしれないと思ってしまったからだ。
「怖い」
息子が泣いた。
「何が」
「何でお母さん平気なの」
「何でって、女の子でしょ」
「違う、絶対違う」
何か違うものに見えているのか、怯えたように階段を上る息子に戸惑った。
女の子は淡々と階段を上ってくる。早くもなく遅くもなく、追いつくわけでもなく。
逆にそれが怖くなった。
どこまで階段を上ればいいのか、わからなくなった。
まさか団地がそれほど高いわけがない。
せいぜいが四、五階くらいのもののはずだったからだ。
おかしい、と頭の中では思う。思うが、今は逃げる方が先だった。
もう上れない、と思ったとき、階段が途切れた。
空がぽっかりと見える屋上だった。
こんな屋上あるわけないと思ったところで、女の子も屋上に上がってきた。
女の子はゆっくりこちらに向かってくる。
たかが女の子だと母親は思っていたが、今この状況のほうがずっと異常なので、頭はパニック寸前だった。
それでも、女の子をかわして何とかして下り階段に行けないものかと思っていたし、女の子はやはり女の子だったというのが本当なじゃないかと思っていた。いや、本気でそう願っていた。
二人は気分的に追い詰められて、屋上の端に移動した。
いざとなれば二人で突き飛ばせばいい。
しかも何も凶器も持っていない、ただの女の子ならば、少々倒れたくらい大事ないだろうと判断した。
それなのに、無性に目の前の女の子が不気味だった。
もうこの際また上り階段でもいいから現れないかと思った。
空は夕焼け空だった。それも、赤く、血のように赤い空。それなのに太陽が、ない。
空以外、何もない空間。
思わず息子を後ろ手にかばった。
こんな瞬間に母性が働くなど、自分も捨てたものじゃないと思ったくらいだ。
息子を後ろにかばったまま女の子に突進した。


気が付くと、息子と二人、廊下に座り込んでいた。
そばには息子のぼうしが落ちていた。
呆然としてしばらく動けなかった。
相変わらず人気のない廊下で、しかもそこは一階だった。
もう階段はこりごりだと思いながら、その隔てている壁を不審者のように息子と二人で乗り越えた。
二人で団地の中庭に下り立って、呆然としたまま中庭を突っ切ろうとすると、そこにいたのは、あの女の子だった…。

…というところで目が覚めました。
ちなみに近所にそういう場所はありませんし、なんでそんなホラーチックな夢だったのかわかりません。
その女の子、何で出てきたんだろう…。


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